いざ、鎌倉フロンティアへ!月間「温故知新」鎌倉
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  月間「温故知新」鎌倉No.65 − 2006年12月1日(金)  
 
いざ、鎌倉フロンティアへ!    65 2006.12月号
夕張市の財政破綻から学ぶべきこと

北海道夕張市の財政が破綻して、財政再建団体に転落をしてしまいました。

 財政再建にあたって、小学校(7校)中学校(4校)はそれぞれ1校に統廃合され、図書館や美術館は廃止、ゆうばり駅のトイレ閉鎖、運動広場、球場、プールも廃止、各集会施設や支所も休止や廃止に。さらに、市税・水道料・保育料などの値上げ、ゴミの有料化などの負担増といった、とても厳しい内容になっています。

 この財政再建団体へ転落するのは、実質収支比率の赤字が20%以上となった場合とされていますが、鎌倉市の場合これが、プラス4.4%ですので、ほど遠いことになります。しかしながら、鎌倉市が財政破綻と無関係かと言えば、決してそうではないと考えます。

 それは、この実質収支比率という指標は、いわゆるフローの部分だけを捉えており、積みあがった公債費(ストック)は対象にならず、また、一般会計と特別会計をあわせた、普通会計を主に対象としているので、(不採算事業を抱える可能性が高い)土地開発公社や第3セクターなどは対象外となるなど、抜け穴の多い指標と思われるからです。

 すなわち、表面的な数字だけを捉えて安心していると、知らず知らずのうちに、多大な借金を抱え、気がついた時にはもう手遅れ、ということにもなりかねません。そうした最悪の事態にならないように、チェック機関である議会があり、議員がいるわけですから、しっかりと把握をしていかねばならないと考えます。

 そのためには、国の基準だけに頼ることなく、積極的に、土地開発公社等の関係団体も全て含んだ形での、連結バランスシートの作成や、将来にわたっての債務負担などの数値を、明確に示していく必要があります。

そして、鎌倉市の問題は

 鎌倉市の市債残高 約1059億円のうち、半分以上の 約543億円が、下水道事業特別会計です。これだけの財政負担をして、ようやく市街化区域の公共下水道の整備がほぼ終わったものの、今後、老朽化にともなう、七里ガ浜浄化センターや汚水管渠の設備更新などを随時行わなくてはならず、より一層、市債残高が増加することは、間違いありません。これが、鎌倉市にとっての大きな重荷になっています。

 さらに、福祉関係の費用は少子高齢化に伴い年々増加しており、交通インフラの整備頻繁、また、近年起こるだろうといわれている、関東付近の大震災被害に備えることや、今後は、団塊の世代の退職金支払い(平成18年〜平成22年の間に総額約86億4600万円かかる見込み)、大船駅東口再開発事業(約30億円)、大船駅西口整備(短期的方策だけで約11億円)、鎌倉駅西口の整備(約21億円)、深沢国鉄跡地のまちづくり(用地取得に3億円)、野村総研跡地の活用(約30億円)等々、費用の掛かる事業が目白押しとなっており、将来的に市財政はまったく余裕がない状況です。

 前置きが大変長くなりましたが、だからこそ、鎌倉市は、財政破綻になる前に、しっかりと借金を減らし、将来の経費増加を見据えて、身軽なっておく必要があります。そのためには、『行政の無駄を徹底的に廃し、効率的な運営を行っていく』ことがより一層重要になってくることは言うまでもありません。例えばそれは、昔から優遇されてきた職員給与制度の見直しであり、公立保育園の民間委託(22年度までに3園を民間委託)や、ごみ収集作業の委託化であり、無駄な補助金の削減であるのです。

 そして今議会で、さらにその流れを加速させるべく提案したのが、「市場化テスト」の導入です。

 「市場化テスト」は、まだ全国的にも試行の段階ですので、様々な定義があり、また誤解もあるのですが、私が提案したものは、行政の全ての業務内容を公開し、民間企業やNPOまたは市民団体などが「そのサービスは、私たちにも提供できる」と考えたら、その提案をしてもらい、そしてその提案のうち、1番優れているものを、住民の方々に選択をしてもらうのです。 この、「選択できる」というところが重要で、単なる経費削減だけに留まらず、より良いサービスを受けたいという住民の判断が尊重されることに、この制度の大きな意味があると考えます。行政内部だけで、業務の委託化の可否を検討すると、様々な事情からどうしても消極的になってしまいます。

 私は、すでに新しい公共サービスのかたち、あり方を考える時代に突入していると考えます。その例として、大阪府や足立区、杉並区、三鷹市、千葉県我孫子市などでは、積極的のこの市場化テストのしくみ、考え方の導入を試みて、新たな地方自治体のかたちを、懸命に模索しています。
 ひょっとしたら最初は、間違った選択をしてしまうかもしれません。しかし、それを続けていくことで、市民と行政、民間企業、NPOなどの役割分担が明確になり、結果的に、市民の方々が望むサービスを、より良い形で提供できることになると考えます。

 
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matsuo@myad.jp